子どもの全力疾走や自転車のツーリングを撮り逃したくなくて、最新の360度カメラを物色していない?

撮影中に構図を気にせず後から好きな画角を切り出せる道具は本当に便利だ。そこに登場したDJIのOsmo 360 IIは毎秒60コマの全周8K記録を掲げて強烈なインパクトを放っている。

だが9万3610円の初値に飛びつくと、動画を書き出す段階で頭を抱えるはずだ。

看板の数字だけに金を払うと痛い目を見る。

撮影8Kでも書き出しは4K

本文図解1

このカメラ最大の売り文句は7680×3840という巨大な解像度を毎秒60コマで残せる点にある。前モデルの毎秒50コマや競合機の毎秒30コマを数字の上でねじ伏せてきた。

動きの激しいスポーツでも全周を滑らかに残せるから、後から見せ場を探す作業には頼もしい味方になる。

機種360度動画の最高フレームレート国内公式価格(円・税込)レンズ交換
DJI Osmo 360 II8K/60fps93,610〜ユーザー交換式
DJI Osmo 3608K/50fps51,260〜DJIサポートのみ
Insta360 X58K/30fps76,300〜ユーザー交換式(交換キット8,500円)

ところが編集アプリで被写体を追跡させた瞬間、冷や水を浴びせられる。

自動で人を追いかけるスポットライトフォローを使うと、出力できる平面動画の上限は4Kの毎秒30コマまで落ちる設計だ。撮影時の看板をそのまま完成動画の解像度だと信じ込んでいた人は書き出し画面の前で固まる。

全周8Kの贅沢な情報量はあくまで切り出す前の仕込み素材に過ぎない。

センサーの表記も公式は1インチ相当の領域と説明し、報道では正方形センサーと伝えられていて基準が分かれている。大きな数字だけで画質の序列を決めるのは危険だと思う。

バッテリー100分の裏側

本文図解2

外へ持ち出して一日中撮り歩きたい人にも、冷徹に突きつけられる数字がある。公式スペックが誇る最大100分の撮影時間は毎秒30コマの設定で通信や画面をすべて切った実験室の記録だ。

現場で毎秒60コマを回し、スマホと無線で繋いだら何分持つだろう?

8K/60fpsでスマホと無線接続した連続時間は公式に示されていない。予備バッテリーなしで旅行に出かける計画は危うい。

幸いなことに本体には105GBの記憶領域が最初から埋め込まれている。microSDカードをうっかり忘れて家を出ても、現場で立ち尽くす事態だけは避けられる。

この内蔵ストレージの配慮には拍手を送りたい。

レンズ交換は自慢にならない

ではこのカメラに9万を超える大金を払う価値はどこにあるのか。DJIが胸を張るのは、前後のレンズを自分で交換できる構造だ。

前モデルのOsmo 360は出っ張ったレンズを地面に擦ったらDJIサポート送りで、修理の見積もりに怯えるしかなかった。傷つきやすい部位を自分で付け替えられる設計は、たしかに機材を長く使い倒す上で大きな安心感になる。

ところがその安心感、DJIは後追いだ。

競合のInsta360 X5は1年以上前から「業界初のレンズ交換式360度カメラ」を名乗り、公式ストアで交換キットを8,500円で売っている。DJIが今回ようやく追いついた話であって、上乗せ料金の理由にはならない。

しかもOsmo 360 IIの交換レンズは、部品代も販売時期も交換手順もまだ公開されていない。壊した時にいくら払うのか分からない安心感に、差額の1万7310円を上乗せして払う形になる。

君ならこの差額を払える?

払っていいのは、毎秒60コマの滑らかな切り出し素材と14.5ストップの階調に価値を見出す人だけだ。看板の8Kに惹かれただけなら、交換キットの値段まで見えているX5の方が財布にも精神にも優しい。

出典