20万円超のスマホの目玉が、6枚の小さな羽根だった。

iPhone 18 Proのメインカメラには、iPhoneで初めて物理的な絞りが入った。F1.48からF4.0までの4段階を標準のカメラアプリで選べる。値札は219,800円から始まる。

AIが写真を全部きれいにしてくれる魔法を想像していた人ほど、拍子抜けするだろう。

いちばん胃が痛いのは、去年iPhone 17 Proを買った人のはずだ。あの機種の絞りはF1.78で固定されている。新型の発表を見て「僕の17 Proはもう古いのか」と青ざめた人もいると思う。

その胃痛は要らないと思う。

理由は羽根の動く範囲と、羽根を動かしても変わらない部分にある。

まぶたは一つの目だけ

F1.48からF4.0へ動く絞り羽根と、背景のぼけ・光条の変化

背面に三つ並んだカメラのうち、絞り羽根を持つのは24mm相当のメインだけになる。超広角はF2.2、望遠はF2.8で固定のまま。

三つの目のうち、まぶたが付いたのは一つだけ。

8倍の光学品質ズームや40倍のデジタルズームも、羽根とは別の仕組みで動いている。望遠に切り替えた時点で、羽根の出番は終わる。

もっと引っかかるのは寄りの撮影だ。料理に近づくと自動マクロが働き、超広角へバトンが渡る場合がある。切り替わった先では可変絞りを使えない。

いちばん絞りで遊びたい皿の接写で、羽根が引っ込むわけだ。

皮肉にもほどがある。

F4.0で光の線が立つ

メインカメラだけが可変絞りに対応し、マクロ時は超広角へ切り替わる境界

F1.48まで開けると背景がほどける。人物や皿の手前にピントを合わせれば、奥の景色が柔らかく溶けていく作例が出ている。

F4.0まで絞ると、奥まで形が残る。夜のイルミネーションでは光源から放射状の線が伸びて、固定絞りでは選べなかった絵になる。

この開け閉めの幅には素直に惚れる。

光の量とピントの深さをソフトの後処理に頼らず機械で選べるからだ。ポートレートモードのぼかしは計算で後から作る。羽根のぼけはレンズの中で光そのものが作っている。

ただ、期待を膨らませすぎると痛い目に遭う。

センサーが小さく焦点距離も短いスマホでは、一眼カメラみたいな大きなボケは出せない。F1.48でも背景がとろけきる絵を求めると裏切られるだろう。

しかも標準アプリはISO感度を勝手に動かす場合がある。絞りを閉じたのに、写真の明るさがほとんど変わらない場面が出てくる。

羽根を動かしても、自動制御が横から口を出してくる。

動画には救いがある。フレームレートに合ったシャッター速度を保ちたい昼間に、絞りで光を減らす逃げ道が一本増えた。

でも真昼の屋外で1秒露光を狙うと、F4.0でも光を抑えきれない。太陽相手に羽根6枚じゃ勝ち目が無い。滝や光跡を撮りたい人は、外付けのNDフィルターを結局カバンに入れることになる。

羽根6枚の値段を勘定する

可変絞りの機械部品へ20万円超を払う価値を撮影頻度で分ける判断

可変絞りはスマホの世界だと古株の仕組みになる。昔のNokia N86やGalaxy S9が積み、Xiaomi 14 UltraもF1.63とF4の切り替えを持っていた。

なのに次の15 Ultraは固定絞りへ戻っている。

羽根が誰にとっても手放せない部品なら、外す理由は無いはずだ。

分解した中身を見ると、6枚の極小の羽根が重なり合い、磁力で開閉していた。壊れたらカメラモジュールごと交換する作りで、羽根だけ直す道はかなり細い。動く部品が増えれば、壊れ方も一つ増える。

買った人たちの満足は、電池持ちと動作の速さとカメラに集まっている。不満は17 Proとほぼ同じ見た目、この値段、日本語で使えないApple Intelligenceの機能に向かっていた。

羽根の話で怒っている人はほとんどいない。

じゃあ値札の中身はどうなっているのか?

僕の勘定だと、あの値札のうち羽根に払う分は小銭に近い。設計に払っている手応えがあるのはA20 Proと電池と容量までで、残りはリンゴのマークに乗った上乗せ分だと思う。17 Proで写真に不満が無い人が新旧を並べても、ほとんどの写真で差を言い当てられないだろう。

絞りを回す日は月何回?

君は月に何回、F値を自分で変えたくなる?

羽根6枚が値札に見合う道具になるのは、次の場面が毎月ちゃんとある人だ。

料理や人物を撮るときに、背景をどれだけ残すかを自分で決めたい日。イルミネーションや街灯に、光の線を立てて撮りたい日。そして昼の動画で、シャッター速度を落として動きのブレを自然に残したい日だ。

どれもピンと来なかった17 Pro持ちは、今日のところ財布を閉じたままで構わない。羽根6枚にこの大金を足すのは、シャッターを押す手前でF値を選びたくてうずうずする人だけで十分だ。

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