1.6万円台のヘッドホンの商品ページに、最大70時間とLDACとノイキャン3.5がずらりと並んでいる。AnkerのSoundcore Space 2である。

通勤電車のゴーッという音を消したくて、iPhone片手にカートへ入れかけた人はいない?

その指、ちょっと待った。

70時間はノイキャンを切った時の数字で、オンにすると50時間まで縮む。しかもLDACはiPhoneで使えない。一番でかい二つの売り文句が、iPhoneで通勤する人の耳には額面通り届かないわけだ。

数字そのものは正直である。注釈を読まないと50時間に気づけない並べ方には、さすがに腹が立つ。

ただ使ってみると、この機種は売り文句とは別のところでちゃんと賢い。

ノイキャン3.5が消す音

本文図解1

本体は約260gで、頭に乗せるとすぐに軽いと分かる。満員電車で長くかぶっていても、首まわりが疲れにくい。

ノイキャンをオンにすると、レールの低い唸りとエアコンの音がすっと遠のいた。

ところが隣の会話はわりと普通に聞こえてくる。

ホームのアナウンスや高い音も残りやすい。眼鏡のつるでイヤーパッドが浮くと、消えていた低い音まで少し戻ってくる。

公式の「圧倒的な静けさ」は、さすがに盛りすぎじゃない?

欠陥と呼ぶ気にもならない。低い騒音ほど打ち消しやすく、人の声や高い音は残りやすい。消す音の得意科目がはっきりしたヘッドホンなのである。

電車通勤には刺さる。話し声だらけのカフェで勉強したい人には、物足りなさが残るはずだ。

iPhoneに届かないLDAC

本文図解2

LDACはAndroid 8.0以降で、端末側も対応している時だけ使える。アプリでオンにする手間もかかり、iPhoneとiPadではAACで鳴る。

ヘッドホン側が対応していても、つなぐスマホが対応していなければ絵に描いた餅になる。

LDACの三文字をiPhone勢に見せるのは、ちょっと元気が良すぎる。

じゃあ有線でつなげばどうなるか。AUX接続ならBluetoothなしでノイキャンと外音取り込みが動く。代わりにノイキャンボタン以外の本体ボタンと内蔵マイクが使えなくなる。

機内の映画やゲーム機には便利でも、PCにつないで会議まで一本で済ませる使い方には向かない。

通話の日は32時間

本文図解3

ノイキャンを切って70時間、オンで50時間、通話しながらオンで32時間。公称値は3段に分かれている。

70時間はノイキャンなしで音楽を流した時の上限である。電車で使う人の数字は50時間で、会議が続く在宅の日なら32時間まで縮む。

音量や使い方でも減り方は変わるから、手元の実感はもう少し短くなるだろう。

とはいえ50時間あれば、毎晩充電を気にする暮らしからは抜けられるはずだ。上位機のノイキャンオン40時間も上回っている。

2台接続はスマホとPCを行き来するための機能になる。通勤中のスマホから席のPCへ、つなぎ直しの手間が消えたのは素直にうれしかった。

1000円差と1万円差

前モデルのSpace Oneは15,990円で、この機種との差は約1000円しかない。ノイキャンは2.0のままで、オン時の電池は40時間止まり。

その差額で世代が一つ上がり、電池が10時間伸びる。迷う理由がほぼ見当たらない。

上位のSpace One Proは約1万円高い。マイクは4つになり、3Dオーディオやノイキャン方式、ドライバーまで別物になる。

その差はロゴ代じゃなくて、声を拾うマイクと処理への上乗せである。

人の声まで消したい人と、通勤の走行音さえ消えれば満足な人。君ならどっちの財布になる?

1.6万のうち設計に払う分は、ほぼ全額だと思う。広告に払う分は、商品ページで70時間の文字が少し大きいぶんくらいしかない。iPhoneで通勤する人にとっては、LDACの分を値札から引いて残る走行音と50時間と2台接続に1.6万を払う話になり、Androidで電車に乗ってPCとも行き来する人には設計どおりの安さになる。

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