洗濯物を畳みながらポッドキャストを流して、隣の部屋で泣き出した子どもの声にもすぐ気づきたい。仕事用のPCで会議の呼び出しが鳴ったら、耳に掛けたまま応答したい。

AnkerのSoundcore AeroClipは耳のふちに引っ掛けるイヤーカフ型のイヤホンだ。耳の穴を塞がないから、生活音と音楽がいっしょに耳へ流れ込んでくる。

ところがこの機種、高音質コーデックのLDACをオンにした時点でマルチポイントが止まる。AndroidスマホとPCを行き来しながら家で働く人ほど、欲張った分だけ機能を取り上げられる。

欲張りな人のための道具なのに、欲張った人から順に罰が当たるってどういうこと?w

耳を塞がない代わりに捨てたもの

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音の通り道はシンプルで、耳の近くのスピーカーから空気を伝って鼓膜へ届く。耳道を密閉しないので、車の走行音も駅のアナウンスも素通しで聞こえる。

ありがたい話だけど、音も同じ道を通って外へ逃げていく。

漏れ対策として、約2,000人ぶんの耳の形状データからスピーカーと耳の距離を詰めてある。でもしんとした場所で中くらいの音量にしたら、少し外へ漏れていた。図書館や会議室なら隣の席に曲の気配くらいは届くだろう。

低音の厚みもカナル型に負ける。幹線道路沿いを歩いたらポッドキャストの声が車の音に埋もれて、何度か巻き戻した。

パッケージの「4マイク+AI」を見て、電車の騒音まで消えると期待した人はいない?

AIが抑えるのは通話で相手に届く雑音のほうで、自分の耳に入る騒音はそのまま残る。

ノイズキャンセリングが無いのは手抜きじゃなく、周りの音を残すための選択だ。遮音と重低音を買いたい人がこの機種を選ぶと、値段の大半を自分に要らない設計へ払うことになる。

0.5mmの針金が耳を掴む

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耳から落ちない理屈は0.5mmの形状記憶チタンワイヤーと柔らかい樹脂のブリッジにある。曲げても元へ戻る針金が耳の軟骨にかかる圧力を分散させる。

片耳約5.9gの軽さもあって、ジョギング程度ならズレなかった。サングラスとキャップを同時に着けても、つるやツバとほとんどぶつからない。

サングラスで走る人には泣けるポイントだと思う。

ただ耳の形は人それぞれで、激しく動く日はキャップを付けるかどうかで安定感が変わる。付属のイヤーカフキャップで厚みを合わせても、相性の個人差まではゼロにならない。

しかもキャップを付けたままだとケースに収まりにくい。落ちないために足した部品が片付けのたびに邪魔をしてくるのは、ちょっと笑う。

タップ操作も強めに叩かないと反応しない時があって、走りながら二度三度と耳を叩いた。

自分の耳をノックしながら走る姿、たぶん人には見せられない。

高音質を選ぶと2台目が消える

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LDACを使うにはAndroid 8.0以降の対応端末に加えて、アプリでの設定とファームウェア更新がいる。iPhoneとiPadは最初から蚊帳の外になる。

問題はLDACをオンにした時点で、スマホとPCへ同時につなぐマルチポイントが無効になること。

高音質か、2台同時接続か。君ならどっちを取る?

在宅勤務の日にLDACのまま音楽を聴いていたら、PCで会議が始まっても音はスマホ側からしか届かないはずだ。慌ててスマホの接続設定を開く羽目になる。

マルチポイントで使っていても、接続先の切り替えに失敗して手でつなぎ直した場面があった。オンライン会議の途中で2台を行き来させるたび、少しヒヤッとした。

僕なら平日はLDACを切って2台接続を選び、休日の散歩だけ高音質で聴く。

防水と電池は表記の範囲で読みたい。IP55はイヤホン本体の等級で、充電ケースは防水の対象外になる。

汗だくで走ったあとは本体を乾かしてからケースに戻すことになる。パッケージにIPX4と書かれたものも出回っているけど、製品自体は2025年7月にIP55を取得済み。

電池は音楽再生で最大8時間、ケース込みで最大32時間。通話だと本体は最大6時間に縮む。どれも公称値で、音量や環境で実際の持ちは変わる。

32時間の数字だけでLDACも通話も込みで丸一日いけると読むのはさすがに欲張りすぎだろう。

この値段のうち設計代は?

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上にはBoseのUltra Open Earbuds(第2世代)がいる。価格は39,600円。立体音響のイマーシブオーディオとワイヤレス充電を積んで、最大9時間の再生をうたう。

倍以上払って防水等級はIPX4に下がるって、どういう計算なんだ?

下には同じイヤーカフ型のSoundcore C40iがいて、値段を抑えた代わりにコーデックはSBCとAACまで。電池も片耳最大7時間、ケース込み21時間に留まる。

つまり下位モデルからの上乗せ分はLDACと防水と軽さと電池の伸びになる。

僕の見立てだと値札の8割は0.5mmの針金と5.9gの軽さとIP55に払う構造代だ。LDACぶんは2台接続と引き換えのおまけで、残り2割の値打ちがあるかも怪しいと思う。

公式ストアでは10月19日23時59分までのセールで12,490円に下がっている。とはいえセール期間だけの数字で、定価は17,990円のまま。

セール中なら構造代だけ払ってLDACまで付いてくる計算で、迷う理由がかなり減る。

家事や育児の合間、軽いジョギング、雑談まじりの在宅会議。周りの音を聞いていたい時間が毎日何時間もある人にとって、この機種は耳に掛けっぱなしにできる相棒になる。この値段で買えるのは子どもの声も会議の呼び出しも聞き逃さずに音を流し続けられる時間だ。

出典