スマホで写真を加工したり文章をまとめさせたりするたび、バッテリーの減る速さに不安を覚えたことはないだろうか。

MediaTekが2026年9月15日に発表した旗艦SoC、Dimensity 9600 Proはその悩みに真っ向から切り込んできた。回路を極限まで細かくした2nmプロセスを採用し、前世代と比べてマルチコアの消費電力を61%削減したと豪語している。

数字だけ聞けば歓喜したくなる。

だが待ってほしい。この強烈な数値をスマホ全体の電池持ちが伸びる合図だと受け取ると、手元に実機が届いた瞬間に頭を抱えることになるはずだ。

AIを端末内で動かす電力設計

端末内AI処理と電力削減の仕組みを示す漫画図解

今回の目玉は、最大300億パラメータのLLMを端末内で処理する設計にある。

新しいNPU構成によって、最大300億パラメータの言語モデルまで端末内で処理できると胸を張る。待機中に動く常時稼働AIの電力も同社発表で40%削減したという。

通信を挟まず手元で即座に答えを返す発想自体は筋が通っている。

とはいえ、30Bという巨大な数字に踊らされてはいけない。どれだけチップ側の器が大きくても、実際に動かすアプリ側が対応しなければ宝の持ち腐れになる。

自分の使う機能がどれだけ恩恵を受けるか、君ならどう見極める?

185fpsと61%削減の数字の読み方

ゲーム向けにはMali-G2 Ultra NXを積み、最大185fpsのプレイを掲げてきた。

しかし185fpsという極上の滑らかさは、対応するゲームタイトル、端末の冷却構造、それに高い描画速度を受け止める画面パネルが完全に揃って初めて成立する。チップの数字だけで全ゲームが超高速化すると思い込むのは危険だ。

一番冷静に見るべきなのは、発表文に並ぶ電力削減の測定範囲じゃない?

マルチコア消費電力の61%削減も、常時AIの40%削減も、SoC単体におけるマルチコア消費電力の61%削減や常時稼働AIの40%削減は、いずれもMediaTekが示した公称値だ。画面の点灯、5G通信、カメラのセンサー、背面の発熱といったスマホ全体の消費電力をごっそり帳消しにしてくれる魔法とは違うんだ。

185fpsや61%削減といった際立って大きな最大値に目を奪われて、日常の使い勝手を置き去りにする値付けに乗せられる筋合いはないはずだ。

9600Mと中国端末の発表予定

MediaTekは同時にDimensity 9600Mという別構成のチップも発表した。

CPUやNPUの構成を変えた別物であり、名前が似ているからといって上位機の性能を安価に手に入れられる保証はない。中身の仕様差をきちんと見比べる姿勢が欠かせないだろう。

搭載端末自体は今四半期中に登場する予定だ。

すでに中国向けとしてvivo X500 ProシリーズやOPPO Find X10 Pro Maxの発表予定が報じられている。ここでも落ち着いて事実を切り分ける必要がある。

海外で魅力的な機種が発表されたとしても、日本で発売されるかどうかは完全に別問題だ。国内向けの価格も通信バンドもキャリアの取り扱いも、現時点では何一つ決まっていない。

だからこそ、現段階で買い替えへ進むのはまだ早い。

このチップが本物かどうかは、搭載端末の冷却設計、バッテリー容量、実機での連続駆動時間が出てから判断すれば十分だ。2nmという看板の響きだけで財布を開かず、まずは端末全体の実測レビューが出る日を待とう。

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